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高森明勅
2019.9.25 06:00日々の出来事

父と祖母

私の父は特攻隊の生き残りだった。
幼少の私に、自分が母親にも内緒で特攻隊を志願した思いを、
繰り返し語った。


敗戦によって世の中の“空気”がどんなに変わっても、
特攻隊を志願した「17歳の自分」を、生涯、決して裏切らない、と。
そして実際、そのように生きた。恐らく、それが私の“原点”なのだろう。
但し、わが家は共働きで、私は祖母(つまり父の母親!)に育てられた。
祖母は離婚していたので、父を女手一つで育てた。
大変な苦労があったようだ。

父は祖母にとって、親孝行で自慢の一人息子だった。
その最大の愛情を注ぎ、頼りにもしていた息子が、自分に何の相談もせず、
必ず死ぬ事が分かっている特攻隊に志願した。
その時の驚きと悲しみ。
深い絶望。
祖母はそれらを、幼い私に繰り返し語った。
あわせて、空襲で逃げ惑った話など、戦時中の辛い体験も、
本当に身震いしながら話してくれた。

「戦争はこりごり。もう二度と嫌だよ、あんなの」と。
苦労して自分を育ててくれた、誰よりも大好きな母親が、どんなに嘆くか。
その事を痛いほど分かっていながら、それでもやっぱり特攻隊を志願する
他ないと思い詰めた父。
息子に裏切られたとまで感じて、絶望の淵に投げ込まれた祖母。
どちらが〇でどちらが×か、という単純な話では勿論ない。
人生の複雑さというものを、漠然とながら、私はその頃から
気付き始めていたのかも知れない。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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